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平成28年度連携講座 : 平成28年度 第12回連携講座
投稿者 : 事務局 投稿日時: 2017-11-13 16:55:39 (168 ヒット)

平成28年度 静岡大学岳陵会 連携講座 第12

 

 

日 時  2017110日(火)1425分~1550

会 場  静岡大学 人文社会科学部 大講義室

受講生  180

講 師  杉原 啓介 様  静岡県庁 くらし・環境部 建築住宅局 公営住宅課

(人文16回 昭和59年 経済学科卒)

 

演 題  「 公務労働の世界 ~現代社会の変容とキャリア形成~ 」 

 

 

わたしは、昭和59年に静岡大学を卒業し、静岡県庁に入庁しました。今日は、地方公務員の実態というか、平凡な地方公務員とはどういうものかを知っていただいて、皆さんの職業選択の助けになれればいいと思っています。

この中で公務員を職業の選択肢として考えている方はいますか。(会場から挙手を求める。)

静岡県出身の方はどれくらいいますか(会場から挙手を求める。)

静岡県庁と静岡市、浜松市の政令市は、大体5月上旬に試験日程が発表され、5月末ごろが応募の締め切り、インターネットでも申し込みができます。ただし、試験日程が重なるため、県と県内の政令市とは両方受験することはできません。

県内の他の市町とは併願が可能かと思います。

 

1 静岡県の概要

私は、中堅の公務員で。ごくごく普通の公務員として歩んできています。どのような仕事をしてきたかをお話しする前に、静岡県の宣伝をさせてください。

 静岡県は、人口は、約370万人、県民所得、製品出荷額県内総生産、いろいろな分野で全国順位5位以内、少なくとも10位以内に入っている県です。

今の川勝知事が「日本一」を見つけようということで、県庁内で見つける取り組みをしています。2輪車の輸出、ピアノ出荷額、医療機器生産、自然環境では、富士山、柿田川の湧水量、とかが一位ですという宣伝をしています。

また、「都」づくりということを常に言っていて、「食の都、茶の都、花の都、森林(もり)の都、水の都、づくりに取り組んでいます。

今、県で一番、悩んでいることは、国もそうでしょうけれども、人口減少と少子化で、国力、県の力を削ぐ要因のひとつとなっていて、既に日本は、人口減少の局面に入っています。予測よりも加速しているのではないかと思っており、本県は昨年の10月現在で、人口368万人位です。ここが一番問題ですが、団体別では人口減少は北海道が1位、静岡県は6,206人の減少、全国では5位の減少県となっています。前年まで2年連続ワースト2位、現在はそれを脱してワースト5位ですが、人口減少は、非常に悩んでいるところです。

 また、どの県も総合計画というものを立てており、本県でも、計画を立て、「富国有徳」とか、「住んでよし 訪れてよし」、「」生んでよし 育ててよし」、「学んでよし 働いてよし」というようなキャッチフレーズを企画部門が考えて、本県の魅力を何とか皆さんに伝えようと取り組んでいます。

 

2 公務員の仕事

  地方公務員の普通の仕事ということを皆さんにお伝えすることが本日の主題ですから、

私が歩んできた道をずっと話していきます。 

 

1) 福祉事務所       ・・・生活保護担当

入庁して、まず、福祉部門の生活保護の仕事を担当しました。

生活保護というとどのようなイメージを持っていますか?(学生を指名→回答を求める。) 

生活保護とは、生活に困っている方を救うための制度となります。憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という「生存権」を保証する制度です。

国民の権利は生存権の他に何があるでしょうか。(学生を指名→回答を求める。)

教育を受ける権利、参政権のほか、職業を選ぶ自由とか裁判を受ける権利もあります。

一方で国民の義務は何があるでしょうか。(学生を指名→回答を求める。)

納税、勤労、教育を受けさせる義務があります。

生存権を保証する生活保護の担当の主な仕事は、生活保護を申請する方と面談し、生活保護が必要かの調査と生活保護を受けている人の訪問、相談を受け、保護費、生活扶助や教育扶助、医療扶助を支給する仕事をします。

、生活保護には悪いイメージがあります。飛行機で東京まで医療を受けに行く、刑務所に入っていても生活保護を受給など、不正受給の報道もされています。

生活保護というものを誤解しないように申し上げておきたいのですが、世の中には生活保護の水準以下で暮らしている人が大勢います。担当者の中には、生活保護を辞退させることを仕事としている行政マンもいますが、私は生活保護の基準以下で、我慢して生活する必要はない、生活保護は皆さんの権利ですよ、と伝えるようにしていました。

生活保護の受給者は、私が担当していた当時、静岡県の生活保護率で3パーミリ程度でしたが、今生活保護率が一番高い県で3パーセントを超えている状況になっています。静岡県がそれほど豊かな県かといえばそうではなくて、我慢して暮らしている方が多いという印象を持っています。

 

生活保護では受給者の自立を目指すのですが、非常に難しいです。障害を持っていて働けない方の自立、就労支援ということがなかなかできないことが現実です。ただ、生活保護を受けていても生きがいを持って生きる、社会に出て、消費をして、自主的な自律的な生活をおくれるよう手助けすることも生活保護の役割だと思いました。

生活保護の担当の時の一番の思い出は、やはり不正受給の問題で、年金を受け取っていても行政機関が把握せずに保護費を余分に払ってしまっていたことが5人位ありました。なぜそのようなことが起きるのかというと、当人たちの問題ではなく、同じ行政機関同士で情報交換があまり進んでいないからです。また、担当者が新しい目で保護を受けている方を見ようとしないことも原因でした。私が昭和30年代まで遡って受診記録を調べて、年金を受給させることができた場合もありましたし、調べたら既に受けとっていた場合も5例ほどありました。

(行政機関同士の情報の共有としては)今の世の中では、マイナンバーというものもこの7月から始まるようです。私の小さいころから、国がずっと導入しようとしている制度で、一番最初は、グリーンカード、国民総背番号制、近いところでは住基カード、住民基本台帳法に基づく住基番号というものがあります。皆さんも住基番号を持っているのですが、国民の経済とか収入を把握したいという思いは国は強く持っています。行政マンとしてもそれが活用できれば非常に便利だと思っています。ただし、元々は、税金、年金、貯金を一元管理したい、無記名の国債などには課税できないという悩みを国が持っており、それを解消するために推し進めている制度だとも思っています。

 

(2) 情報管理課       ・・・企画担当、島田市役所出向

次の転勤で、情報管理課に行きました。これは県庁のコンピューター、電算処理を担当する部門です。

皆さんのなかでパソコンを使っていると思いますけれども、パソコンを使って研究、日常の大学の学問、学習の中で使っている方はいますか?どんなソフトを使いますか?(学生を指名→回答を求める。 ・・ワード、パワーポイント等)

エクセルを使ってる方は?データベースソフトはあまりいないですか?パソコンを使わなくてはならない場合が多いので、とりあえず学生の時には、公務員試験には全く関係ないですが、ワープロソフト、表計算ソフトは、県庁、市役所に入っても、どの会社に入っても必須でしょう。また、データベースソフトを経験しておいた方がよいです。パワーポイントは非常に簡単なソフトなので、勉強しなくてもできると思います。進むとCAD、イラストレーター、画像ソフトを使える職員もいます。

私の世界を広げてくれたソフトは、データベースソフトで、今、私が担当している公営住宅の仕事の3万件以上のデータの分析・処理では、表計算ソフトでは、限界がある部分が多いので、若いうちにいろいろなソフトに触れておくのも呑み込みが早いのでよいでしょう。

情報管理課での仕事ですが、各部門から申請されてくるシステム開発の内容の資料をまとめる仕事とかをやりましたが、大型コンピュータの知識は皆無でついていけず、役立たずの社員として2年間を過ごしてしまいました。

自分でシステムの開発に携わったことはないのですが、ここで得たことは、論理的な考えの図式化です。よくフローチャートというのですが、判断があって、条件により処理が分かれる、「YES」だとこう処理し、「NO」の場合はこうというように図示します。今やっている仕事を処理していくのに、条件によって処理を変えていくということは、どんな仕事でも、コンピュータ処理であってもなくても発生します。図式化して物を考えるということを学びました。

一番に辛かったことは、オンライン障害の発生時です。今、ATMでもなんでも、世の中はいろいろなことをオンラインで処理しています。何が原因で障害が発生したのか、原因がハードなのか、ソフトなのか、まったく分からなくても、すぐ復旧しなければオンライン業務に差し支えます。センターコンソール(中央監視装置)から出力されるエラーメッセージをみて対応するのですが、管理をしている部門としては辛かった覚えがあります。

そのあと1年、島田市役所に出向をしております。1年間のなかで、固定資産税の電算処理、軽自動車税の電算処理、プログラムを組むことと、財務会計システムの企画などをやりました。

 

3) 計量検定所       ・・・総務、計量器の検査

 その次に行ったのが計量検定所で、ここでは総務課と計量器の検査を担当しました。

 計量検査をやっていると知っている人はいますか?(会場から挙手を求める。)

タクシーのメーターで、工場に行ってメーターを検査したり、実際に走らせて検査をしています。ほかには水銀製の体温計の検査、ガスメーター、血圧系の検査もやりました。実際に測ってみて正しく測ることができるか間違っていないかを検査するのが計量検定所の仕事でした。

ここでの疑問は全数調査でした。体温計なら1本、1本、見て検査していくのですが、なぜ全数調査をやらなければいけないのかが非常に疑問で、工場の品質管理というのは、5%の抽出検査とかでやっているはずで、全数調査は非近代的な方法のはずですが、検査はすべて全数調査でやっていました。

多分、この計量検定というものは、計量法という法律に基づいて行っているのですが、過去の遺物なのかもしれません。戦後、秤をごまかせば儲かる商人がいた、それを取り締まる、秤というものは太閤検地の時代から国家にとって非常に大切なものですから、測るということを国家が保証するために、計量検査があるのだと思います。

 

(4) 財務事務所       ・・・自動車税担当、不動産取得税担当

 次に行ったところが、財務事務所で、事務職が良くいく所です。やはり国も県でも主な収入は税金です。それを徴収する、課税するところが財務事務所です。

ここで質問をします。

今、国の税収はいくらくらいだと思いますか?(学生を指名→回答を求める。)

50数兆、60兆円は行っていないと思います。

では、国家予算はどのくらいだと思いますか?(学生を指名→回答を求める。)

来年の予算で約100兆位、100百兆円をちょっと欠けるかも知れません。

歳入(税収)が50数兆で国家予算が100兆円ということは、県庁もそういう状況ですが、国の未来がどうかるのかなというのが公務員としても私の感覚です。

どんなに国の借金があっても、かなりの部分を日銀が国債引き受けをしているので心配ないと主張する学者がいるのですが、今、国の借金はいくら位あるか知っていますか?(学生を指名→回答を求める。)

国と地方と併せて1,200兆円、国債発行残高で800兆円を超えて、借入金を含めると1,000兆円を超えています。新聞報道で見たことがある人もいるでしょうが、借金大国と言われているギリシャ、イタリアよりも多いといわれています。家計で言うと600万円の年収の世帯が、1億円の借金をしている状況であり、静岡県も結構借金があるのですが、国の未来はどうなるのかという感覚が私には強くあります。借金の問題は皆さんへのツケとなって返ってきます。

多分、国債が最初に始まったのは、昭和40年代の建設国債位からかもしれません。その後、ここまで国債残高が増えたのは、オイルショック後の赤字国債を、当時の福田首相、大蔵大臣だったかもしれませんが、「劇薬を使います。」と言って始めた赤字国債が、ここまで続いていることが今の現状です。

最後に県の借金について話をしますが話を先に進めます。

財務事務所では自動車税を担当し、その後、不動産取得税を担当しました。

当時の公務員の徴税は、私から言わせると旧態依然としていて、訪問徴収が特に多かったです。行って「今日払えますか?」という徴収が多いのです。私はあまり行ったことはありませんでした。銀行でも消費者金融でも訪問徴収という非合理なことはしないはずで、私が出張する際は、近隣の商店で相手方の電話番号を伺うとか、相手方との接触手段を調べるために出張しました。出張が少なくて徴収できるのという意見もありましたが、私の徴収率は県下の自動車税の地区徴収率ではトップだったはずです。

その後、不動産取得税、県にはいろいろな税金があり、主には個人県民税や法人県民税が大きい割合を占めるのですが、その中で不動産取得税を担当しました。

財務事務所での思い出は、徴収できない人からは取れないということです。税金を取ろうとして行くと生活に困窮する人がいる場合があります。債権者としては普通やらないのですが、「破産しなさい。」「消費者金融に右から左にお金を返すだけがあなたの人生ではないでしょう。」と言って、破産申請書を書いてあげたのですが、消費者金融からは破産申請したら裁判で訴えてやるなどと脅されるわけです。その際、徴税吏員の私に相談をしてくるので、消費者金融に私から電話し、「国のガイドラインで、破産申請した者への督促は控えるようにと言われているのに督促をするなら、営業停止をされたいのか。」と伝えたこともありました。上司に徴税吏員として度を過ぎていると言われましたが、地方公務員は、人々の幸せのために生きるものですから、破産は債務者の権利なので、権利を教えてあげるべきだと思っています。今も家賃の滞納整理をやっていて、破産を進めることもたまにはあります。

財務事務所での他の思い出は、時効についてです。公務員の仕事では債権を管理することも多いので、時効に対する感覚が多少必要になります。職員の中には、本人がいなかったので、子供から徴収して時効を止めたといった者も居りましたが、時効は止まりません。そのような知識は法律を勉強する中でやると思いますが、公務員は法令に基づいて、県では条例に基づいて仕事をするので、公務員が持っている権力の根拠は何かという勉強をどの部署に行っても始めるわけです。学生の時に民法を、就職をしてからでもいいですが、民法が非常に大切だということを感じます。経済では、簿記、公務員は単式簿記ですが、民間企業はすべて複式簿記、財務諸表が基礎ですので、複式簿記を学んでおけば新しい世界、見方ができると思います。

あと、税金についてです。消費税についてこれは間接税なんですが、消費税をアップするときに、将来の社会福祉のために使うのだと言っておりますので、ここから目的税の話をします。

目的税とは何か知っている方はいますか?(学生を指名→回答を求める。)

目的税とは使途を決めてかける税金です。静岡県では森林税をかけてるかと思います。あと狩猟税なども目的税なのですが、私見ですが、目的税というのはまやかしです。消費税をアップした分をすべて社会福祉のために使うのなら目的を達成されるのでしょうが、増収分をすべて基金にしなければ目的を果たせません。

民間企業では「この収入はこれに使う。」という考えはしません。全体の収益はこれ、支出はこれという経理をしています。目的税は国民、県民を説得するために使われる名称なのです。例えば年金は、過去は、「年金は世代と世代の助け合い」といい、6人で1人の高齢者を支えると言っていましたが、現在では3人~2人で1人を支えるとなっています。

決して消費税を上げるのは間違っていると言っているわけではありません。消費税のアップを将来の社会福祉のためというならば、基金として増収分を積み立てなければならないと言っているのであって、行政マンとして目的税は目的のために使うからいいのだと安直に考えてはいけないという気がしました。

 

5) 病院            ・・・医療情報室

病院では電算処理を担当しました。インターネット時代の始まりで、大型コンピュータから、その後、スマホとか手元のタブレットの時代になることになります。

この時には、コンピュータと医療機器とコンピュータの接続に苦労し、いろいろなテストをやりました。今、電子カルテと言って、レントゲン、MRI、CTの画像は医師の手元に情報がきます。ある決められた規格によってはコンピュータに取り込むのですが、事務職として知識が必要でしたので、新しい知識をつけるのに苦労しました。

 

6) 公営住宅管理      ・・・滞納整理、・特別会計の設置

その後、県庁に入って通算で12年間携わることになった公営住宅の管理をしました。公営住宅というのは低所得者に住宅を提供する仕事です。当時、滞納が増加の一途で滞納整理の強化を求められ、即決和解を100件以上、訴訟を40件以上、弁護士をつけないで訴訟もしたこともあります。

公営住宅の時、包括外部監査が入りました。これは、民間の公認会計士を入れて、内部の監査だけでなく、民間も入れた監査をやるというもので、非常に厳しい監査を受けたのですが、その方が、公営住宅は県とか市にとって黒字になる事業だと言った一言に衝撃を受けました。県や市がやる事業に黒字になるものがあるのかと思って調べてみたら、国からの国庫補助を入れると黒字になるのです。

公務員は経営に疎いので、各事業でどのように収支のバランスが取れているのかということを考えない職員が多いです。それはなぜか、公務員は、借金を歳入として数えるからです。私は公営住宅課では事業を経営の目でどう見ることができるかということを学びました。

この中で経営学、簿記を取っている方はいますか?経済学科の方はどれだけいますか?(会場から挙手を求める。)

簿記は大学1年生の時は取らないんですね。複式簿記、バランスシート(貸借対照表)、損益計算書を通して、儲けとはなにかを合理的に分析できる、記帳するものが複式簿記です。公務員の世界は単式簿記なので、その業務が資産がどれだけあってどのように収入があってどのように支出して、黒字か?経営的にどうか?と分析することは苦手ですが、それをやることによって経営的にどうかという新しい見方をすることができます。

現在、国でも県でもホームページで財務諸表を公開していますが、利益を追求しない行政は経営学的な分析はあまりできないのではないかと思っています。

県庁には、あまり直接、県民と接する部署が少ないので、公営住宅の管理では、様々な経験をすることができました。

家賃を滞納して住んでいる人を追い出すにはどういう手段がありますか?法律学科の方はいますか?


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