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平成29年度連携講座 : 平成29年度 第9回 連携講座
投稿者 : 事務局 投稿日時: 2018-09-19 15:31:07 (64 ヒット)

平成29年度 静岡大学岳陵会 連携講座 第9回

 

日 時  2017124日(月)1425分~1550

会 場  静岡大学 共通教育B501

受講生  80

講 師  椛田 弘 様  

シティバンク、エヌ・エイ東京支店  

コンプライアンス部門 AMLコンプライアンス部 部長

(人文学部14回 昭和57年 法学科卒)

演 題  「 私のキャリアと学生生活 

 

 

 

みなさんこんにちは。(会場 こんにちは) 今ご紹介に預かりました、シティバンクという所で働いております椛田弘と申します。1982年に人文学部法学科を卒業しまして、今年で35年も経ちます。皆さんの年齢よりも遥かに長い年数社会人をしています。皆さんのお顔を拝見して、大変若いなあと思わず感慨に耽ってしまいました。それではレジュメに従いまして始めさせて頂きます。

 

1.現職務内容について

 

シティバンクについて

 それでは現在の職務の内容につきまして、お話させて頂きます。先ほども申し上げましたが、シティバンクというアメリカの銀行の東京支店で、「AMLコンプラインス部」という部がありまして、そこの部長を2010年から務めており、もう丸8年近くになります。

 シティバンクっていう銀行、アメリカの銀行なんですけども、みなさん名前聞かれたことありますか?聞いたことがあるって方、手をあげて頂けますか?(檀上から学生に質問) あぁ、やっぱりいないか・・・(笑)。

 シティバンクは資産規模で言うとアメリカの銀行の中で3番目の銀行です。1番大きいのが JPモルガン・チェース、2番目がバンク・オブ・アメリカ、そして三番目がシティバンクとなります。2008年に金融危機というのが世界的にありましたけれども、その以前は元気がよくて当時は世界で一番規模の大きかった銀行なんですけども、その金融危機の時に危なくなりまして、結構資産を売却しまして、今は3番目となっております。ただ資産規模は落ちたんですけど、ネットワークは結構なものがありまして、世界の160ヶ国位に拠点があります。国際連合(国連)に加盟している国が約200ヶ国位あります。その中で取引が禁止されている国だとか、後でお話しいたしますが、そういうのを除けばほぼ世界中に拠点があるといえる銀行です。

 金融危機後、随分社員の数も絞りましたけど、それでも今、26万人ぐらいの社員が世界で働いております。

 約200年位の歴史があるんですけども、日本には1902年に横浜に支店を開設し途中中断の時期もありましたが、日本に進出している外国の銀行の中でもかなり古い部類に入ります。

 私もシティバンクに入ってから初めて知ったんですけども、明治時代に日本で初めて建設された新橋から横浜間の鉄道は、シティバンクからの日本政府への融資でまかなわれたそうです。シティバンクの宣伝はこのくらいにしまして(笑)AMLということについて話していきたいと思います。

 

AML = Anti-Money Laundering  マネーロンダリング防止

 マネーロンタリング防止(以下AML)と聞くと、何か遠い話のように感じるかもしれませんが、たとえば皆さんが銀行に口座を開きにいくと、本人確認書類(免許証等)の提出を求められるとおもいます。それがAML防止のまさしく第一歩になります。

AMLに於いてはまず、本人確認が第一。その次にマネーロンダリングの可能性がある疑わしい取引の当局への届け出。昨年日本国でのその届出数は約40万件がなされています。

たとえば振込詐欺。突然電話がかかってきてお金を振り込んでくれないかという詐欺電話。実は私の母も過去5回位そんな電話をうけました。

 もう少し詳しくお話を致します。

 

AMLの4つのピラー

   資金洗浄行為の防止(狭義)

 犯罪(麻薬等の販売)等で得た資金を、そうでないきれいなお金に見せかける行為。麻薬等の売買の資金(汚い資金)は銀行は受け入れてくれません。

1989年 フランスでG7サミットが開催され、AML特に薬物犯罪防止に重点を置いたAMLの組織FATFFinancial Action  Task Force on Money Laundering)がOECDの組織の下に設置されました。本部はパリにあります。

 

   テロ資金供与の防止

2001911日アメリカの同時多発テロ(真珠湾攻撃以来となるアメリカ領土に対する攻撃。しかも世界貿易センタービルや、ペンタゴンというアメリカの経済と軍事力のシンボル・中心部への攻撃)を受け、アメリカ国民は大変驚き、怒りました。その結果、金融界に対して、テロリストに対して資金を与えるなという潮流が世界中に起こりました。それがテロ資金供与の防止と言われています。

 数年前にもパリやニースでテロがありました。多くの方が命を落とされました。そういったテロリストが活動を行えないようにするために資金を断つという目的です。イスラム国などもそうです。こういった話ってなにか遠い外国のような感じをうけます?じつはそうではなくてこの日本にもかつて「日本赤軍」というテロリスト集団がいたんです。テルアビブやダッカでテロ行為を働きました。またオウム真理教の地下鉄サリン事件も国際的にはテロ行為であると認識されています。

 

   経済制裁対応

今最もホットな話題です。そうです北朝鮮です。核実験やミサイル発射が連日ニュースになっていますね。国際社会は北朝鮮との貿易を禁止したり、特定個人の資産を凍結したり資金の移動を禁じています。超大国のアメリカがやっぱり経済制裁対応に於いても主導しています。アメリカの財務省内にOFAC(外国資産管理室)が置かれていて、経済制裁を主導していて、北朝鮮、イラン、キューバ、クリミア、シリア、そういった国や地域との取引を禁じています。

 

   反社会的勢力との取引の排除

 反社会的勢力とは、いろいろな呼び方がありますが、概ね暴力団のことです。現在、日本には暴力団対策法で指定された団体が22団体あります。国際的に見て独特な組織です(規模や種別など詳しく説明)。2013年、みずほ銀行が反社会的勢力との取引の不備から頭取が辞任する騒ぎにまで発展いたしました。実は以下は私のシティバンクへの転職にも影響があった出来事なので詳しくお話させて頂きます。かつてシティバンクも反社会的勢力との取引排除、マネーロンダリング防止をきちんと行っていないとされて、日本の金融庁から「業務改善命令」を受けました。2004年に一回目の命令、そして2009年には二回目の命令を受け、その際は「外部の反社会的勢力との取引排除、マネーロンダリング防止に詳しい人間を採用しろ」とのかなり厳しい指摘を受け、たまたま私が採用されたといういきさつがございます。

 

2.大学卒業後の経歴について

大学卒業後、1982年4月、現在の三井住友銀行に入行し、日本銀行のすぐそばにある日本橋本町支店と、赤坂支店に勤務しました。そこで銀行業務の基礎を経験させてもらいました。その間に語学研修(日米会話学院派遣)に行かせて頂いて英語漬けになりました。その後、国際本部の国際業務部に配属になりまして、その後はだいたい海外に配属されるのですが、私の場合はロンドン証券現地法人に3年間、ロンドン支店にも3年間、通算6年ロンドンで勤務していました。気づけばベルリンの壁崩壊(1989年)、湾岸戦争(1991年)、ソビエト社会主義共和国連邦の崩壊(1991年)、EU統合(1993年)だとかの世界の激動を比較的近い場所で経験することをしてきました。しかしながらやっぱり長い海外での勤務で日本食が恋しくなって(笑)。そうして日本に1994年の12月に戻らせてもらったんです。年が明けた1995年の1月17日。阪神淡路大震災が起こり、翌々月には先ほどもお話に出てきましたオウム真理教による地下鉄サリン事件という、日本もなにか物騒な時代に入ってきたころでしたね。本店営業部に2年勤務させて頂きました。その後1997年また海外の香港支店へと転勤になりました。この年は、香港がイギリスから中国に返還された年です。歴史的な香港返還の前後の時期を経験させて頂きました。香港支店では日系企業に対しての営業活動の統括を致しておりました。その後、私が勤務していたさくら銀行は同じ都市銀行である住友銀行と合併する運びになり、私は日本に帰ってきました。ようやく日本に帰ってこれたと思ったのですが、今度は海外拠点監査の仕事を与えられました。この部署では海外出張ばかりしていました。数年間年間140日間は海外出張していました。1年は365日なのですが、もうほとんど海外にいる体感になりますこれは(笑)

その後2001年に先ほどお話した同時多発テロが発生しテロ資金供与防止の強化が叫ばれるようになり、翌々年の2003年、当時は「三井住友銀行」になっていましたが、銀行全体のAMLを担当することになりました。その後、システムでテロ資金供与やマネーロンダリング行為を発見していくようにアメリカ当局から、日本の3大メガバンク(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友)が立て続けに業務改善命令を下されました。

そして、コンピューターシステムで疑わしい取引を発見し調べていくオフィスを立ち上げました。これがマネーロンダリング対策オフィスと呼ばれ、そこの所長を務めることになりました。で、その頃なんですが。ヘッドハンターと呼ばれる人から私あてに電話がかかってきまして、初めは興味がなかったんですが、やっぱり外資系企業の「〇〇」の高さに目が眩んで(笑)シティバンク銀行(当時)に転職してしまいました。

~オフレコにて、給与待遇面でのお話を椛田さんからして頂きました。金融業界更には外資系ならではの待遇面でのお話を頂き、「学生さんにもこういう世界があるんだと知ってもらう機会に少し生々しいお話をさせて頂きました」~ 

  

3.自身の学生生活について

 入学から就職まで

比較的真面目に勉強したかなあと思います。大学の授業にもしっかり出席していました。時々アルバイトをして、3年間で卒業に必要な単位は取れていました。4年生の時はゼミだけ出ているような状況でした。

当初は大学内の片山寮に入りまして、家内ともそこで知り合いました。その後アパートで生活しました。やっぱり法学科だったので、司法試験を目指して受験しました。3年生の時と、4年生の時と2回。司法試験を受ける人の集まり、静法会に入っていました。しかし司法試験は合格ならずの大学4年生の秋、

就職活動の準備は特に何もしていませんでした。みなさん方とは時代も違いますから、最近の「就活」に関しては参考にならないかもしれません。たまたまなんです。クラスメートから銀行のOBが静岡にきてOB面接をやるらしいから一緒にどうだと言われて、じゃいくかと。なにが良かったのかわかりませんけど、次は東京の本店に来い、誘われるがままで。当時は10月1日が解禁日で、その日に銀行に呼ばれて行きますと即拘束されまして(笑)気づけば入行していました(笑)

 

現在役に立っていること

大学時代に学んだ法的なものの考え方です。日本のAMLに関して様々な法律があります。たとえば近年話題になっているテロ等準備罪。この法律はパレルモ条約という国際条約に基づいているんですね。日本国政府の説明によれば条約の条件として、共謀罪の設置が求められていたのですが、過去3回共謀罪に関する法案が廃案になっていて今回ようやく法制化されたわけです。そういった世の中の構造、しくみを法的にとらえることができるのは大学時代に勉強した法律の知識が基礎になっています。それから先ほどお話させて頂いたFATFという組織。ここが世界のAMLの総本山ともいえる組織なのですが、AMLのための世界的な基準づくり、またその基準に則って各国が運用をしているかの審査。その二つがFATFの大きな役割です。過去に日本国は3回審査を受けているのですが結果は散々たるものでした。2001年の同時多発テロを受けてのAML強化の流れから2003年に日本で本人確認法が成立しています。このようにすべてつながっているのですね。2008年のFATFの審査ですが、その審査に合わせるように犯罪収益移転防止法という国内法も整備されてきたのですね。その時期全銀協という全国の銀行の集まりのトップである会長をさせて頂いていたのが私の勤務先である三井住友銀行の頭取であり、私はそこでAMLをやっておりましたので、FATFの審査官の前で日本の銀行はこのようにAMLの対応をしていますよという説明を致しました。その結果が半年位後にきまして、日本の銀行はそこそこやっている、という私にとってはうれしい結果。しかしながら日本国政府はまだ法整備において不備がありますという内容でした。日本国政府のAMLに関する決まりに法的な強制力がなかったんですね。それを受けて犯罪収益移転防止法は以後2回改正をされました。その間にFATFは更に上のレベルでの審査体制になっていて、その審査が2019年に控えています。かなり厳しい要求を突き付けられると思われます。日本の銀行界、政府でも危機感を持って対策をしていまして、どうも金融庁でもAMLに関する新たな監督指針を発表するようです。実は私明日金融庁に呼ばれていまして、その件での相談を持ちかけられるようです。年明けの実施になるみたいです。

官庁からの相談で言えば似た話が過去にもありました。2006年北朝鮮による核実験やミサイル発射が立て続に起きた時期の話なんですが、今でこそ「この送金は北朝鮮とは関係ありません」と海外送金の際には宣言させられるしくみになっていますが、当時はありません。財務省から呼ばれてそういった仕組みを銀行業界に導入できるか打診を受けたことがあります。これに関してはやることはできます、と回答しました。しかしながらこれが大事なのですが、この宣言に関して顧客側のdeclaration(宣言)のみにしてくれということを伝えました。つまり本当にその送金が北朝鮮に関係がないかということを、銀行が確認する必要がないという条件にしてくれと。そうでなければとても実務上まわらないと。こういった法的な関係性の見方なんですけども、それが大学時代の勉強が基礎になっていて、それが非常に役に立っているというお話です。大学時代に個々のこういった法律を学んだ訳ではありませんがその基礎となる権利・義務関係の法的関係の基礎知識が生きています。

 

4.学生の皆さんに伝えたいこと

みなさんに伝えたいことを偉そうになんですが(笑)いくつか書いてきました。

・いろいろなことを経験しておくといい

 先般の同窓会誌「岳」でのインタビューでもお話させて頂いたことなのですが、学生のみなさんはいろいろなことを経験しておくといいと思います。そもそもなんで私がAMLの仕事を任せられるようになったのか。銀行で人事の人に聞いたことがあります。そうしたら「あなたは大学時代に刑事訴訟法ゼミだったでしょう」と言われました。たしかにAMLと刑事訴訟法は近いと言えば近い。そんなきっかけなんです。なにが言いたいかと申しますと、人間何がどこで役に立つかわかりません。ましてや若いみなさんは大きな可能性を持っていらっしゃる訳ですから、いろんなことに挑戦して行ってもらえればいいと思います。

 


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