文系の価値を今こそ見直そう⑦

投稿日時 2016-11-02 11:42:20 | カテゴリ: 3.在学生からのレポート(学生レポーター)

こんにちは。学生レポーターの大石 真です。

 今回は、社会学科の今村直樹先生のところにインタビューに行ってきました。日本の近世史・近代史について研究されている先生で、日本史概論(後半)、日本史概説(前半)、日本近世社会史などを担当されています。なお、静大祭のキャンパスフェスタ(11月19、20日)で、岳陵会と同じ人文B棟で古文書展を出展されます。

 本題のインタビューに入る前に、今村先生は4年前にもインタビューに応えてくださっているので、まずそちらを読んでみてください↓。

http://e-gaku.org/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=207

 

 では、それに続く形でいきたいと思います。

 

1.現在の研究内容について教えてください

 

 大きなテーマとして江戸時代の地域行政について研究しています。現代の日本には、市役所や町役場がありますが、そうしたものが歴史的にどのようにでき形成されたのかという点に関心があります。具体的には、江戸時代の地域行政を担っていた大庄屋(藩領)や、代官所(幕領)などの制度や組織のあり方に関心があり、現在の役所機構の歴史的源流は江戸時代に遡ることができると考えています。

 

 こうした研究を通してわかったことは、第一に、江戸時代後期に百姓層を運営主体とした地域行政の基本的な枠組みが形成され、それが明治以降も継承されていったことです。第二には、江戸時代の行政役人の方が、現代の地方公務員より労働日数が多いこともあった点です。例えば熊本藩の大庄屋の役所では、年間290日という現代では考えにくいような村役人の労働日数が定められていたことが古文書からわかりました。(年間休日75日、月にして6日強)

 

 

2.韮山反射炉について、携わっていると日本史の授業で言っていましたが、具体的にどんなことをされていましたか

 

 先に述べた代官の研究に結びつくかたちで、韮山反射炉が存在する伊豆の国市の文化財関係の委員もしています。幕末の韮山代官江川氏は反射炉のような近代遺産の建造に関わっていました。

現在は、韮山反射炉そのものよりも江川家の古文書(江川文庫)に着目して研究しています。国の重要文化財でもある江川文庫には、数万点規模の古文書等が現在まで保存されてきているのですが、十分にまだ調査・研究が進んでおらず、これから研究の余地が大きくあります。また、これほど大切な史料にも関わらず、保存される収蔵庫がこれまでないため、現在は収蔵庫の建設、整備事業にも関与しています。

将来的には、これらの史料が広く公開され、調査・研究などに大きく役立てられることを望んでいます。

 

3.日本近世史や近代史を学ぶことでわかることや学ぶことの意義について教えてください。

 

 古文書を読むことで、今まで通説となっていた従来の歴史像が塗り替えられたり、びっくりしたりすることがたくさんあります。例えば、2であった村役人の働きぶりなど、現代人が思っているよりもハードワークで、大きく印象が変わりました。また、江戸時代の史料を読んでいると、意外と当時の人びとも、現代人と同じような悩みや社会問題を抱えていることがわかります。古文書というと、ボロボロで古臭く、役に立たないもののように見られることもありますが、そこには現代の私たちと同じように、一生懸命日々を生きた先人たちの姿や苦悩などがぎっしり詰まっており、そうした過去の営みを知ることで、より良い未来を構想する知恵が得られると思います。

 

 

4.静大祭の古文書展のみどころを教えてください。

 

今年の静大祭の古文書展では、駿河国安倍郡の下足洗新田(現静岡市葵区千代田)の古文書を分析します。江戸時代の村で起こった事件や、当時の領主と百姓たちの関係などがよくわかります。

江戸時代の村や百姓たちが日常的にどんな問題を抱えていたのか、また彼らがどのように問題を解決しようとしたか、その具体的な過程や方法に注目すると、現代との共通点や差異がわかりやすいと思います。

あとは、学生たちの頑張った成果を是非見ていってください。

 

 

  今回は、今村先生のインタビューの後に、古文書展の準備している様子を見てきました。

 こちらは、古文書の内容に対する、解説を作っているところです。







 こちらは、地域から借りた古文書の整理をしているところです。






 

 






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