静岡大学岳陵会の会長に選出頂きました山下徹(人文10回・経済卒)です。どうぞよろしくお願い致します。
同窓会につきまして私なりの考えを述べたいと思います。
言うまでもありませんが、同窓会は収益団体ではありません。同じキャンパスで過ごした仲間が集う文化団体とでも言えましょうか。だから、同窓会の運営は文化政策に似ています。地道な事業や活動が、すぐに形となって効果が表れない点も共通しています。効果が見えにくいため、文化政策は、国あるいは自治体が文化に対する理念があって明確な意図をもって進めないとうまくいかない。例えば、伝統的な芸術や芸能、建築物を継承、発展させたり、保存して公開したりする。または、まちに賑わいを生み出したい、活性化したいという考えも意図の一つ。文化・芸術をもとに、地元の経済成長を図るというのも明確な意図です。
歴史を振り返れば、文化政策は統治や経済政策と密接な関係で行われてきました。織田信長は戦国武将でもあり、エコノミストでもありました。現在の額で1億円以上とも言われる資産を持ち、茶道具や絵を集めてブランド化し、各武将に分け与えました。論功として利用するだけでなく、「価値ある名物」に変えるという政治手法を取ったのです。豊臣秀吉も茶器を論功に利用しただけでなく、積極的に名物を購入させることで戦国大名たちの経済力を武力に向かわせないようにした。両雄とも明確な意図による文化政策・政治戦略を用いて権力を築いたのです。
では、岳陵会の事業を進めていく意図、考えは何なのか。私は、静岡にゆかりの深い人物二人から学び取りたいと思います。江戸幕府を開いた徳川家康と、最後の将軍・徳川慶喜です。家康、慶喜に共通することは絶えず国全体を見て決断してきた点です。家康は「厭離穢土 欣求浄土」(おんりえど ごんぐじょうど)を旗印にして平和な世を求め、乱世に終止符を打ちました。幕藩体制のもと農業経済を主体として260年もの平和を保つ土台を築きました。慶喜は「尊王攘夷」の総本山である水戸藩で生まれ育ち、途中で「尊王開国」に切り替えたものの、「尊王」だけは生涯ぶれず、大政奉還後は約30年間、この静岡の地で趣味人として生きました。両将軍とも目先の勝利や利益にとらわれず、経験や知識を駆使して「日本・世界」という観点から物事を見続けた。静岡発の教えではないかと思います。
同窓会と大学・学部が両輪となって優秀な人材を育成することが岳陵会事業の根幹になります。会員の皆様、日々ご多忙のこととと推察致しますが、ぜひとも岳陵会の事業にご理解頂きましてご協力下さいますよう、切にお願い申し上げます。
2023(令和5)年6月
静岡大学岳陵会
会長 山下 徹
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